高速なシステムで国際競争力を強化する
東京証券取引所が選んだネットワーク基盤

株式会社東京証券取引所(以下、東京証券取引所)は今年1月、次世代株式売買システム 「arrowhead(アローヘッド)」を稼働しました。注文応答時間や情報配信スピードを大幅に 短縮するミリ秒レベルの高速性をはじめ、市場利用者(投資者、取引参加者)の要求に応える 高い信頼性や拡張性など、世界最高水準の性能を備えたシステムの提供を通じ、東京市場 の活性化と国際競争力の強化を推進しています。そのネットワーク基盤となる「arrownet (アローネット)」のコアに、ジュニパーネットワークスのマルチサービス・エッジルーター 「Mシリーズ」を採用。東京証券取引所がarrowheadで何を目指しているのか、そしてネット ワークに今後、何が求められるのかなどについて伺いました。

image 東京証券取引所 常務取締役兼CIOの鈴木氏とJuniper CEOのケビン・ジョンソン

東京証券取引所の市場価値を高めるITの高度化

ITを駆使した金融技術の高度化などを背景に、個人投資家のインターネット取引の普及や、証券会社・ 機関投資家によるアルゴリズム取引(コンピュータを使った自動売買)など、新たな取引手法が広がりを 見せています。そして、証券会社ではより高速な執行能力・サービスの提供に向けてシステムを増強する 一方、証券取引所は多様な取引に対応する高速なシステム処理能力とスピードが求められています。

こうした市場環境の変化、取引形態の多様化が進むなか、東京証券取引所では最先端のITをフル活用 した事業基盤づくりを推進し、東京市場の国際競争力強化を図ってきました。

東京証券取引所常務取締役兼CIOの鈴木義伯氏は「証券市場において、今後もITの高度化が加速し、 証券取引所はITの活用により市場競争力を高める時代になっています。多様な取引形態に対応すると ともに、東京市場の情報をいち早くお客様に届けるシステムの高速化が不可欠です。そして、国内だけ でなく、海外の投資家のニーズに応えるためにも、ITの高度化を続け、お客様にそのメリットを享受 していただく。それにより、東京証券取引所の市場価値を高め、東京市場の流動性向上に貢献できると 確信しています」と話します。

高速性と信頼性を備えた世界最高水準の「arrowhead」

東京証券取引所のITの高度化を具現化したのが、株式・CBなどのオークション取引を対象に、2010年 1月から稼働した次世代株式売買システム「arrowhead」です。注文・約定処理の高速化といった市場 利用者のニーズや、取引注文の小口化、取引件数の急激な増加に対応するために開発。高速性、 信頼性、拡張性などを兼ね備えた世界最高水準のシステムとなっています。

arrowheadは、ミリ秒(1ミリ秒は1秒の1000分の1)レベルでのマーケットアクセスを実現する高速性が 大きな特徴です。旧システムでは、約3秒かかっていた注文応答時間を、arrowheadでは2ミリ秒以下に 大幅短縮。そして、相場情報の配信スピードは3ミリ秒以下になるなど、売買・情報配信の両面でミリ秒 レベルのスピードを実現しています。これにより、利用者は市場動向を瞬時に把握し高速な取引が可能となり、 arrowheadは流動性の向上とともに、新たな取引形態やビジネスモデルの創出に貢献すると期待されています。

arrowheadは高速性に加え、高い信頼性が特徴です。トレーディングサーバの構成は、3重化を採用。 さらに大地震など広域災害時にも事業継続できるよう、プライマリーセンターに 加え、セカンダリーセンター(バックアップサイト)を設け、信頼性の高いシステム運用を行っています。

こうした高速性や高い信頼性を備えたarrowheadの狙いについて、鈴木氏は「証券取引所の評価基 準が時代とともに変わっています。かつては時価総額や上場銘柄数などを要素に評価されて きました。これらに加え、現在は取引のスピードや安定性などの要素が重要視されています。さらなる 高速性や信頼性を追求することで、東京証券取引所の評価をより高めていく必要があるのです」と語り ます。

より高速なレスポンスを実現するコロケーションサービスを提供

世界の主要な証券取引所では利用者の多様な取引ニーズに対応するため、 より低遅延なシステム処理時間短縮のスピードを競い合っています。東京 証券取引所がarrowheadの稼働を開始したことにより、世界の証券取引所 と同等、もしくは世界水準を上回る高速性を実現しているといえます。

東京証券取引所執行役員兼コロケーション推進室長の吉田康宏氏は 「arrowheadの稼働後、注文処理や情報配信のスピードが非常に速く なったと、お客様から高い評価をいただいています。arrowheadが高速な 取引エンジンを備えることにより、従来のシステムでは困難だった多様な 取引手法が行えるようになりました。証券取引所の役割は、単に注文を処理 する時代から、新たな取引スタイルを生み出す時代に変わっています。市場 利用者の利便性を高め、多様な取引ニーズに応えるのがarrowheadなの です」と強調します。

そして、市場利用者の高速・低遅延に対する要求はとどまることがないと いいます。例えば、市場利用者は自社のデータセンターと東京証券取引所 のデータセンターを高速ネットワークで結び、売買システムや市場情報を 配信する相場報道システムなどを利用しています。arrowheadのようにシス テムの処理能力が大幅に向上し、レスポンスの高速化が進む一方、利用者 はより速く市場の情報を入手し、より速く発注処理するためのスピードを 求めています。

こうした市場利用者の要求に応えるのがコロケーションサービスです。証券 会社などの機器を証券取引所のデータセンター内に設置するコロケーション により、物理的な距離を短縮し、高速・低遅延のレスポンスを実現します。既に 欧米では、市場利用者を証券取引所に呼び込むための手段の1つとして コロケーションサービスを提供。東京証券取引所では、昨年、新オプション 取引システムTdex+の稼働時からコロケーションサービスの提供を開始。 「利用者はarrowheadでより高速なレスポンスを享受でき、コロケーション サービスの新たなニーズが広がっています」と吉田氏は説明します。

arrowheadやコロケーションを支える高速・高信頼のネットワーク基盤

arrowheadやコロケー ションサービスを支える ネットワーク基盤となる のが、2009年に稼働を 開始した次世代ネット ワーク「arrownet」です。 東京証券取引所のシス テムと証券会社、情報 提供会社などを結ぶ基幹 ネットワークとして設計、 構築されました。地震 災害時にも取引を継続 できるよう2カ所のデータ センターにシステムを配置するとともに、両データセンターをつなぐネット ワークの障害時には高速な系切り替えでシステムへの通信を維持する など、キャリアクラスの高速・高信頼性が特徴です。

東京証券取引所では、システムの高速処理に対応する低遅延の伝送や事業 の継続性など、次世代基幹ネットワーク基盤に求められる技術を検討。通信 キャリアに匹敵する高速性や耐障害性、トラフィックの増大に対応する 拡張性などを要件に必要なネットワーク技術を検討した結果、WDMや MPLSによる堅牢なリング網の構成を採用、導入しています。

そして、arrownetのコアにジュニパーネットワークスのマルチサービス・ エッジルーター「M320」、「M120」及びJunosソフトウェアを採用。「MPLSの 対応など、ジュニパーネットワークスの機器は当社の要件を満たす機能を 備えていたことに加え、キャリアや海外の証券取引所での導入実績を評価 しました」と、吉田氏はMシリーズの採用理由を振り返ります。

arrownetは、市場利用者のアクセスを収容する2カ所のアクセスポイン トからデータセンター内のシステムまで、通信の遅延時間はわずか1ミリ 秒以下。つまり、「アクセスポイントから入ってきたデータをarrowhead で処理し、再びアクセスポイントに送り出すまでの時間は3ミリ秒以下 です。このスピードが戦略的インフラとしての武器になっているのです」 と東京証券取引所ITサービス部マネージャーの坂本忍氏は話します。

arrownetのコアは二重化されたMシリーズでMPLSのリングを構成。「ネット ワークの耐障害性が高く、安定的な運用管理が行えます」とITサービス部 長の清水友彦氏は述べます。現在、20Gbpsの帯域を利用してarrowheadや コロケーションなどのサービスを提供。そして、システムが高速になるほど、 市場利用者はより広帯域のネットワークを必要としています。 「こうした市場利用者の要望に応え続けることが私たちの使命です。 arrowheadにより、国内のみならず、世界の市場の中で、東京市場の位置を 高めています。しかし、世界では今や、ミリ秒からマイクロ秒の時代へと突入 しています。今後も、最先端のITを駆使してシステムの高速化に挑戦して いかなければなりません」と鈴木氏は断言します。

あたかも世界最速を競うF1レースのように、市場のスピード競争が激化する なか、ITベンダーには「私たちの要求レベルに応え、常に最先端技術を提供 し続けることが求められているのです」(鈴木氏)と強調します。最先端のITで 国際競争力を強化する東京証券取引所の高レベルな要求に対し、今後も ジュニパーネットワークスは先進の技術力とサポート力で応えていきます。

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